今でこそ一般的になった株主優待クロス取引ですが、昔はそれほどメジャーな投資法ではなかったかと思います。
最近では証券会社がこのクロス取引自体を勧めていますよね。それもあってか昔はあまり無かった一般信用取引と言われる取引も各証券会社で取り扱われるようになりましたよね。
そんな中、制度信用取引と一般信用取引どちらでクロス取引すればいいのかっていう問題もあるかと思います。
いや、そうでもないんですかね?なんか雰囲気的には一般信用取引の一択という感じがしますが果たしてそうでしょうか?
ということで今回は株主優待クロス取引で現物買いと信用売りを作る場合、制度信用取引と一般信用取引とでは何が違うのか?それぞれのメリット、デメリットもまとめてみます。
株主優待クロス取引についてはこちらを参照ください。
もくじ
制度信用取引と一般信用取引
まずはそれぞれの違いを簡単におさらいしましょう。
制度信用取引とは
制度信用取引は金融商品取引所等の規則によって対象銘柄や決済期限、品貸料が決められています。制度信用取引の手数料や金利等は各証券会社で違いますが、対象銘柄や決済期限、品貸料はどこの証券会社で取引しても同じですよね。
一般信用取引とは
対して一般信用取引は証券会社との間で取り決めた方法で取引する方法です。なので対象銘柄や決済期限や品貸料は証券会社が自由に決めることができるんですね。
品貸料とは逆日歩の事ですが一般信用取引はご存知の通り通常、逆日歩はかかりませんよね?一般信用取引は証券会社との取引なので逆日歩についても証券会社が自由に決められるという事です。
しばしば無期限信用取引と言われたりもしますが、これは一般信用取引で決済期限を証券会社が無期限にしたもので一般信用取引の一つなんですね。今は決済期限が決められているものもあるので一般信用取引と言ったほうが良いでしょう。
デイトレ向きサービスの一日信用取引も決済期限を1日にした一般信用取引の一つです。
クロス取引をする場合の違い
では株主優待クロス取引をする場合、一般信用取引と制度信用取引では、どういった点が異なるのでしょうか?
対象銘柄
制度信用取引は金融商品取引所で取扱銘柄が決められていますが、一般信用取引は各証券会社が決めることができますよね。
一般信用買いについてはほぼ全銘柄が取引できるようですが、一般信用売りについては各証券会社によって取扱銘柄も取扱数も様々です。
なので制度信用取引では取り扱っていない銘柄も一般信用取引では信用売りができることもあります。
決済期限
制度信用取引は決済期限が6ヶ月と決まっていますが、一般信用取引は一日の場合もあれば無期限の場合もあります。株主優待クロス取引であれば制度、一般どちらでも基本的にはあまり関係ありません。
品貸料(逆日歩)
逆日歩は制度信用取引で信用売りをしている場合、日本証券金融が発表する金額を支払うことになりますが一般信用取引で信用売りをしている場合は基本発生しません。証券会社が投資家との間で逆日歩を発生させない取り決めで取引を行っているからだと思います。
金利、貸株料
金利、貸株料は一般的に制度信用取引よりも一般信用取引の方が高く設定されています。一般信用買いは基本全銘柄を対象にしているため信用リスクが高いからと思われます。
配当落調整金
制度信用取引の場合、配当金の額から所得税(15.315%)の源泉徴収相当額を控除した金額が配当落調整金になるのに対して、一般信用取引は配当金と同額が配当落調整金になります。
メリット
制度信用取引
- 金利、貸株料が安い
- クロス取引は権利付最終日だけで良い
- 配当金と配当落調整金との差額が利益になる
一般信用取引
- 逆日歩のリスクがない
- 制度信用取引で取り扱いが無い銘柄もクロス取引できることもある
デメリット
制度信用取引
- 逆日歩のリスクがある
逆日歩のリスクについてはこちらで検討してみました。
一般信用取引
- 金利、貸株料が高い
- 在庫切れになるとクロス取引ができないため人気銘柄は権利付最終日よりも前にクロス取引する必要もある
配当金について
クロス取引をした場合、現物株の配当金は源泉徴収後の金額を受け取ることができます。対して信用売りをした場合には、配当落調整金を支払いますが、制度信用取引か一般信用取引かで扱いが変わります。
仮に配当金が100円の銘柄をクロス取引した場合でそれぞれの取引の違いについて比較してみましょう。税率は簡便的に所得税15%、住民税5%とします。
※正確には所得税に2.1%の復興特別所得税が加算されますので所得税は15.315%です。
一般信用取引の場合
現物買い、一般信用売りのクロス取引の方がわかりやすいので、こちらから説明しますね。
現物株の配当が100円の場合、20%(内訳:所得税15%、住民税5%)分の税金20円が控除(源泉徴収)された80円を受け取ることになります。
対して一般信用売りの配当落調整金は配当金と同額の100円を支払うことになります。
現物株の配当金100円の利益と配当落調整金100円の損失が相殺されて損益はゼロになりますから源泉徴収された20円は還付されます。
これはわかりやすいかなと思います。
制度信用取引の場合
現物株の配当が100円の場合、20%(内訳:所得税15%、住民税5%)分の税金20円が控除(源泉徴収)された80円を受け取ることになります。これは先ほどと同じです。
対して制度信用売りの配当落調整金は配当金100円から所得税相当額(15%)の15円を差し引いた85円を支払うことになっています。
そうすると、現物株の配当金100円の利益と配当落調整金85円の損失ですから15円の差益が生じます。
この15円に20%の税金がかかりますので3円課税されることになりますが、すでに20円源泉徴収されているので17円が還付されます。
つまり源泉徴収後の配当金受取額80円-配当落調整金85円+還付金17円で12円手元に残ることになります。
15円の利益から20%の税金3円が引かれて12円手元に残ると考えるとわかりやすいのではないでしょうか。
比較表
一覧にするとこんな感じになります。
一般信用 | 制度信用 | |
現物配当金 | 100 | 100 |
源泉徴収額 | -20 | -20 |
配当落調整金 | -100 | -85 |
還付 | 20 | 17 |
損益 | 0 | 12 |
捕捉
※ここは細かいのであまり気にしないでください。
配当落調整金は配当所得ではなく譲渡所得になりますので上記のように配当金と相殺する考え方は正確ではないのですが便宜上そうしています。ですが特定口座源泉徴収あり、配当の受取方法を株式数比例配分方式にしていれば、このようなイメージで勝手に処理されますので深く考える必要はありません。
信用買いの配当落調整金も配当金100円から所得税相当額(15%)の15円を差し引いた85円です。この差し引かれる所得税相当額は源泉徴収ではないので、85円が譲渡益になります。つまりこの85円に20%の税金がかかり手元に残るのは85円×80%で68円になります。
現物なら源泉徴収後の80円が本来手元に残りますが、信用買いだと68円にしかならないんですね。この差額12円が現物買いと信用売りのクロス取引をした時に手元に残る12円とも言えます。
まとめ
ここまで制度信用取引と一般信用取引を比較してきましたが、配当については少しややこしい部分があるのでどちらの信用取引を利用するにせよ、証券口座は特定口座源泉徴収あり、株式数比例配分方式を選択することをおすすめします。
一般信用取引でクロス取引すれば逆日歩も発生せず、配当による影響も特に考える必要はありませんので良くわからなければ一般信用取引を活用していきましょう。
もし制度信用取引でクロス取引する場合は配当金の12%程度が手元に残ると公式のように覚えておけば良いと思います。
さらに逆日歩は譲渡損失になるので他の株取引等で譲渡益が出ていれば通算できますので実質逆日歩は80%分の負担で済みます。付かないに越したことはないですけどね。
逆日歩のリスクがあるので制度信用取引でのクロス取引は敬遠されがちですが、このようにメリットもあるのです。
なので制度信用取引と一般信用取引どちらが有利かというのはクロス取引する銘柄によるという事になると思います。
ただ私は一般信用取引はあまり利用しないんです。これは勝手な想像ですが、証券会社が一般信用取引でのクロス取引をゴリ押ししてくるので何か搾取されているような気がしてしまうんですよね。。
とはいえ、逆日歩が発生しなさそうな銘柄は制度信用取引で、逆日歩が発生しそうな銘柄は一般信用取引でというように上手く使い分けられると最高ですよね。